天帝のつかわせる御矢

天帝のつかわせる御矢 (講談社ノベルス)

天帝のつかわせる御矢 (講談社ノベルス)

第35回メフィスト賞受賞作の続編。ほとんどの人間はオススメは出来ませんが、メフィスト賞を受け入れる懐がある人間にはたまらないミステリですな。

帝國色の残ったままの日本のパラレルワールド。そこには東満州帝国が存在し、戦火から逃れるために主人公の古野まほろと柏木照穂は超豪華列車『あじあ号』に乗る。ウラジオストクを抜け、間宮海峡のトンネルをくぐり、樺太を抜け、日本を縦断し、帝都東京を目指す『あじあ号』。さらに、そこに乗り合わせたのはネーミングセンスと個性のぶっ飛んだVIP達であり、その中には伝説の間諜が乗り合わせているという噂が飛び交う。
・・・・・・そりゃ、ここまで舞台が揃えば、人の1人や2人が死なない方がおかしいわ。(笑)

オリエント急行のオマージュに始まり、前作以上の婉曲な過程を経て、最後はメタミステリレベルにまでぶっ飛ぶ構成は、他では読めません。(読みたがる人間も少ないだろうが・・・) 1作目読んでさえ、1500円払って続編買った人間なら必ず楽しめます。自分が小説家ならこういう作品書きたいんだよね。無駄に瀟洒なのにも関わらず、冒頭の引用にハマーン・カーンをもってくるとか、絶対作者とは気が合いそうだ。こういう本が読めるから、メフィストはやめられない。